華やかな花飾りの、その裏側で

華やかな花飾りの、その裏側で

一凛堂の店主に聞く、職人という仕事のいま

成人式や七五三の晴れ姿を彩る、つまみ細工の髪飾り。 その華やかさの裏側に、つくり手たちが直面している現実があることは、あまり知られていません。

今回は少し、表からは見えにくいお話を。一凛堂の店主に、職人という仕事のいまと、これから守っていきたいものについて聞きました。

「手仕事を続けること」が、難しい時代

つまみ細工にかぎらず、手仕事の世界はいま、大きな曲がり角に立っています。

「産業の仕組みそのものが、変わってきているんです」と店主は言います。

かつては、問屋が職人と客のあいだをつなぎ、仕事を運んできてくれました。職人はものづくりに専念できた。けれど、その仕組みが薄れていくにつれ、職人は自分で売り先を見つけ、自分で食べていかなければならなくなります。

「ものを作るのと、それを売るのは、まったく別の力が要ります。営業が得意な職人ばかりではありません。そうやって、続けることをあきらめる人が増えていった」

つくる技術はあっても、それだけでは立ち行かない。職人の数が減っていく背景には、こうした構造の変化があるのです。

加工賃は、最盛期の「半分以下」

もうひとつ、店主が静かに語ったのが、対価の問題でした。

つまみ細工の職人が受け取る加工賃は、髪飾りが最も売れていた50年ほど前と比べて、いまや 半分以下 になっているといいます。

「市場ができても、製造はどうしても安いほうへ流れていきます。海外で安く作れるとなれば、そちらへ。価格の競争になると、ていねいに作る職人ほど、報われにくくなってしまう」

安さを競う流れのなかで、本当に良いものを作れる職人ほど、その手間に見合う対価を得られなくなる。結果として「一凛堂が求める品質を担保できる職人」 ― 本物を作れるつくり手が、年々減ってきているのだと、店主は危機感を口にします。



「価格」ではなく「価値」で残す

では、一凛堂はどうするのか。 店主の答えは、はっきりしていました。

「価格ではなく、本当に良いものを残していきたいんです」

市場の原理だけで値段を決めるのではなく、職人がきちんと暮らしていける加工賃を確保したうえで、品質に見合った適正な価格をつける。

「職人が食べていける。だから良いものを作り続けられる。良いものだから、お客様にも選んでいただける。この循環を回していかないと、技術そのものが途絶えてしまう」

良い素材を選び、手間のかかる技法を守り、その価値を正しく価格にのせる。それは、ただ高く売るためではなく、つくり手の暮らしと技を、次の世代へつないでいくための姿勢なのです。

職人を「育てる」ということ

技を未来へ残すには、守るだけでなく、新しいつくり手を育てる必要もあります。

「一凛堂の品質を保てる職人を、どう増やしていくか。これがこれからの大きな課題です」

ものづくりは、一朝一夕に身につくものではありません。けれど、安定して仕事があり、それで暮らしていける道筋が見えれば、技を継ごうという人も現れる。需要に応える供給の体制を、品質を落とさずにどう作っていくか ― 店主はそこを見据えています。

安く速く作ることではなく、「一凛堂品質」を担えるつくり手を育てること。それが、この手仕事を続けていくための、いちばん確かな投資なのかもしれません。

おわりに

晴れの日を彩る一輪の花飾りの裏側には、それを生み出すつくり手たちの、地道な手仕事と、いまを生きる現実があります。



その手を止めさせないために、一凛堂は「価格ではなく価値で残す」道を選んでいます。 ひとつの髪飾りを手に取ることは、その背後にある技と、つくり手の暮らしを、未来へつなぐことでもあるのです。

次回は、その職人たちが実際に何にこだわり、どんな技で花を生み出しているのか。 一凛堂の「素材」と「技」の世界を、のぞいていきます。

 

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