取材を終えて ― ふと、目に留まる花飾り

取材を終えて ― ふと、目に留まる花飾り

一凛堂を訪ねて、見えてきたこと

正直に打ち明けると、取材を始めたばかりのころ、つまみ細工はどれも「同じようにきれいな花飾り」に見えていました。

色も形もさまざまで、どれも華やか。けれど、その違いがどこにあるのかと聞かれても、うまく答えられなかったと思います。

何度か一凛堂に足を運び、店主の話を聞くうちに、その見え方が、少しずつ変わっていきました。

「中心を見てください」という言葉

きっかけは、店主のひとことでした。
「花の中心を見てください。そこに、つくり手の腕がいちばん正直に出ますから」



 

それまで、髪飾りといえば、全体の色合いや形ばかりを眺めていました。でも、言われて花の真ん中をのぞいてみると、確かに、ものによって表情がまるで違うのです。

中心まできれいに花びらが詰まっているもの。 中心に小さな飾りが載っていて、その下がどうなっているのかは見えないもの。

それまで素通りしていた一点に、こんなにも差が出るのか ― 素直に驚きました。

見る目が、育っていく

不思議なもので、一度そこに気づくと、街で見かける髪飾りにも、自然と目がいくようになりました。

ショーケースの前で、つい中心をのぞき込んでしまう。生地に近づいて、絹の透明感を確かめてしまう。気づけば、以前とはまるで違う見方をしている自分がいました。

ここで、ひとつ正直に書いておきたいことがあります。 世の中のつまみ細工に、優劣をつけたいわけではありません。さまざまな素材で、さまざまな価格で作られたものには、それぞれの良さと役割があります。

ただ ― 見る目が育ってくると、違いは、はっきりと分かるようになります。 そして、そうした目で見たとき、一凛堂の花は、近づけば近づくほど、良さが伝わってくるのです。

近づくほどに、伝わるもの

派手さで人目を引く花ではないかもしれません。 けれど、ふと近づいて中心をのぞいたとき、生地の透明感にふれたとき ― そこに込められた手間と技が、静かに伝わってくる。

なぜ福島・川俣の歪まない生地にこだわるのか。 なぜ手間のかかるでんぷん糊を、いまも守っているのか。 なぜ職人が食べていける価格を、大切にするのか。

取材を重ねて、その理由がひとつにつながったとき、一凛堂の小さな一輪が、ずいぶん違って見えるようになりました。 それは、遠くから眺めて「きれい」と思う花ではなく、近づくほどに「いいな」と思える花でした。

おわりに

つまみ細工は、人生の節目を彩る花飾りです。 成人式、七五三、結婚式 ― その晴れの日は、写真に残り、記憶に残り、ときに次の世代へと受け継がれていきます。

だからこそ、その一日に寄り添う一輪は、近づいて見たときに「いいな」と思えるものであってほしい。 取材を終えたいま、そう感じています。

もし機会があれば、ぜひ一度、花の中心までのぞいてみてください。 そのとき、この花飾りに込められたものが、きっと伝わるはずです。

 

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